退去費用を安く抑えるために知っておきたいこと

  • 2020.10.08
  • 2024.02.27

トラブルなく 気持ちよく退去するために

賃貸物件から引っ越しをする際、新たな入居先の初期費用とは別に、これまで住んでいた物件の退去費用が発生します。退去する時は次の人が入居できるように原状回復が鉄則で、そのための費用がかかるのです。その負担額や負担範囲に関しては貸主と入居者の間で、トラブルが発生することが往々にしてあります。お互いが気持ちよく次の準備ができるよう、まずは原状回復とはどのような状態なのか確認しましょう。

原状回復とは?

原状回復とは、お部屋を入居時の状態に戻すこと。当然、借主に責任がありますが、そう単純なものではありません。
たとえ居住者がいなかったとしても、不動産は時間が経過していくだけで価値は減少し、劣化していくからです。ですから原状回復といっても、当然、経年劣化は考慮されます。しかし、どこまでが経年劣化と言えるのかは見極めが難しいものです。国土交通省は「原状回復を巡るトラブルとガイドライン」で細かく規定していますので、参考にしてください。

そこで借主に課せられているのは、「賃貸人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃貸人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」となっています。
やや難しい文面ですね。なかでも「善管注意義務違反」とは耳慣れない言葉かもしれませんが、「善良なる管理者の注意義務」と言うこと。すなわち、借主が通常の使用を超えて故意にお部屋を損傷させてしまったり、注意を怠って損傷させてしまった部分については、退去時に責任を負わなくてはならないと言うことです。

また、東京都では住宅の賃貸借におけるトラブルを回避するため「紛争防止条例」を定めていて、法律や判例から定着した考え方をあらかじめ説明することが義務付けられています。それは、入居の契約時に渡される賃貸借契約書内に記載されています。

貸主・借主双方の費用負担の決め方

原状回復費用の貸主と借主の負担をどのような基準で割り振るかは、上記で解説した通りです。その原則はいたって明確で、その部屋の損傷が経年劣化や自然損耗によるものか、故意過失によるものかによって区別されます。

経年劣化・自然損耗=貸主負担
故意過失・社会通念上で通常の使用方法に反する損傷=借主負担

そして実際の負担額を算出するには、それぞれの劣化や損傷の原因について経過年数(居住年数)も考慮しながら、貸主・借主双方の負担範囲と負担金額を決めていきます。

原状回復費用の支払い方

敷金が入居時に徴収されている場合は、その敷金から清算されます。原状回復費用が敷金の金額を超えなければ残額が返金されますが、上回ってしまった場合は借主に追加の請求がなされます。

一方、敷金を入居時に徴収されていない場合は、原状回復にかかる借主側の負担分の実費が請求されます。こうしたケースでは、退去費用が想定以上に高くなってしまうこともあるので要注意です。管理会社によっては敷金を徴収しない代わりにクリーニング費用をあらかじめ初期費用として含むケースもあります。このクリーニング代も実費を上回ってしまった場合は、追加で請求されることがあります。

あらかじめ費用負担を求められる特約とは

ここまでは退去時の費用負担について解説してきましたが、実は入居の際の契約に物件のメンテナンスなどにかかる費用を負担する契約条項がある場合があります。
これは賃貸借契約の特約の一つにあたるものです。契約とは双方が交渉して決めるものですが、賃貸物件を借りる契約では貸主や管理会社から一方的に提示されることがほとんどです。ですが、社会通念上妥当と認められないものに関しては、無効を主張できる場合もあります。無闇な費用を負担しなくて済むように、契約書はしっかりと読み込み、わからない部分に関しては遠慮せずに質問しましょう。

一般的な特約

クリーニング費用の実費負担

原状回復(傷の補修や設備の交換)とは別に、退去時のクリーニング費用を借主が負担すると言う特約です。実費を負担するケースと初期費用として一律金額を支払うケースがあります。

小規模修繕の自己負担

エアコンや浴室設備などのメンテナンスは賃貸では貸主の負担となることが通例です。一方、蛍光灯や電球、エアコンのリモコンの電池、給水パッキンなどの消耗品の取替えは借主が対処するのが一般的。「小規模修繕の自己負担」とは、これを明記した特約です。

退去費用を安く抑えるために

入居時の状態を記録しておく

契約書類の中に、「入居時の現況確認表」(入居時チェックリスト)が含まれている場合は必ず提出しましょう。これは、お部屋に入居前からあった傷や汚れを記録して、退去時に自分の責任範囲を明確にする証拠資料となるものです。
壁の傷、扉の不具合をていねいに確認し、引き出しなどの内側まで調べましょう。水回りはしばらく水を出しっぱなしにして、不具合がないかを確認します。そして傷や汚れが見つかったら、それを写真に撮っておきましょう。こうした確認は家具などを運び込む前に行うこともポイントです。
お部屋を隅々までチェックした上で、現況報告書を管理会社に提出します。傷や汚れがあれば、その証明として、なかったとしてもなかったことの証明が必要になるので必ず記入し提出しましょう。書類で出す場合はコピーを取り、メールなどで送信する場合は保管しておき、必ず手元に控えが残るようにしておくことも大切です。

管理会社などから現況確認表の提出を求められない場合も、ご自身で作成することをおすすめします。傷や汚れ、不具合部分などの写真と一覧にまとめた表を2部作成し、1部を管理会社に、もう1部を自分で保管しておくと、退去の際にもとからあったものか、入居後にできたものかの判断に活用できます。

お部屋を丁寧に使う

経年劣化は、お部屋をどのように使用しても避けられないもの。経年による損傷を直す費用は貸主負担となります。ところがそれ以外に関しての故障や傷については、すべて借主負担となってしまいます。壁に何かを貼るときには跡が残らない方法にしたり、家具などの移動の際も気をつけるなど、日ごろから丁寧にお部屋を使うことを心がけましょう。


経年劣化の例

壁に貼ったポスターや絵画が日照などによって跡がついたり、自然現象による壁紙の変色、家電製品の背面の電気ヤケ、建具の不具合など。


故意過失の例

引越し作業中の傷、ペットの引っかき傷、タバコやアロマオイルなどの壁紙への臭い移り、エアコンの水漏れ放置による壁紙や床の腐食、お風呂の空焚きによる故障など。

清潔に保つことが効果的

日々の暮らしで蓄積した汚れを除去するには、業者による特別な清掃作業が必要になる場合があります。退去時のクリーニング費用はそれだけで高騰してしまい、退去費用もかさみます。そんなことにならないように、日ごろから定期的な掃除を行い、汚れを蓄積させないことが大切です。きれいにしていれば退去の立会いの時の印象もよくなりますし、減額交渉もしやすくなるかもしれません。

退去費用の請求額が納得できない場合は?

退去費用に関しては、貸主と借主の間で認識の相違があったりすることから、トラブルも非常に多くなっています。もしも退去費用の請求額に納得できなければ、賃貸借契約書や国土交通省のガイドラインを確認したうえで請求書や見積もりを照らし合わせ、管理会社に相談してみましょう。それでも解決しない場合は、国民生活センターなどの公的窓口に問い合わせてアドバイスをもらうなども得策です。
退去費用は賃貸契約のなかでも、とりわけトラブルが起きやすいと言われています。もし請求額が不当だと感じる場合は、交渉してお互いの一致点を見出さなくてはなりません。その交渉材料の一つとして、その請求内容が借主の責任ではないということが証明できるように、入居時に現況確認表を作成しておきましょう。また、何よりも有効なのは、お部屋を「汚さず、傷つけず」使用することです。清潔に保ち、丁寧な使い方をしていれば修繕費用を少なくしていけることでしょう。
住まいのリライフ千代田店の外観

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