失敗しない持ち家の住み替え方法~お金編~

  • 2018.11.06
  • 2024.02.27

住み替えにかかる費用 利用できる控除は?

マイホームを購入するときは、立地やライフスタイルなどさまざまな条件を吟味して物件を選びますね。ところがライフスタイルや家族構成の変化は予期せず起こるものです。それにともなって住み替えが避けられない事態も起こりえます。そんな時、買い替えのための費用をどうするか、また、マイホームを「先に売るか」、移住先の物件を「先に買うか」でも迷うところでしょう。今回は売却、購入双方にかかるお金について、「費用」「住宅ローン」「節税」の観点から検証していきます。
本コラムは、失敗しない持ち家の住み替え方法~基礎編~ の後編です。

売却と購入に必要な費用

住み替えにかかる費用は、新居の購入費用だけだと考えてはいませんか? 実は売却時にもさまざまな費用が発生します。どんな費用がかかるのか、それぞれの費用を解説します。

売却時

仲介手数料不動産仲介会社を介して売却が完了した場合に発生する、仲介会社への報酬です。上限は取引金額によって異なります。
取引金額が400万円を超える場合:取引金額の3%+6万円+消費税
     200万円を超え、400万円以下の場合:取引金額の4%+2万円+消費税
     200万円以下の場合:取引金額の5%+消費税
印紙税売却の際に交わす契約書には収入印紙を貼らなければなりません。これも取引金額によって変わります。
例えば、取引金額が500万円を超え、1,000万円までであれば5,000円の収入印紙が必要です。
住宅ローンの繰上げ返済とその手数料住宅ローンが残っている状態では売却はできないので、繰上げで残額を返済する必要があります。また、この返済にも手数料がかかります。手数料の金額は融資を受けている金融機関によって異なりますが、おおよそ数千円から2万円ほどです。
登録免許税住宅ローンを組んで不動産を購入した場合、担保を確保するために不動産に対して「抵当権」を設定します。ローンが完済された場合、この抵当権を抹消する手続き(抵当権抹消登記)を司法書士に依頼します。この手続きにかかる税金が登録免許税です。
司法書士への報酬上記の抵当権抹消登記を行うには司法書士に依頼しなくてはならず、その報酬がかかります。

購入時

仲介手数料個人の売主から不動産を購入した際に発生する費用です。金額は、上記の売却時と同様です。
手付金売買契約時に売主に対して支払う預かり金です。相場は購入額の5~20%ほどで、引渡し時に代金の一部として充当します。
印紙税契約書には収入印紙が必要ですが、取引金額によって変わります。
例えば、取引金額が500万円を超え、1,000万円までであれば5,000円の収入印紙を張る必要があります。
住宅ローンの借り入れ費用新たに住宅ローンを組む際に必要な諸費用。中古物件か新築物件などで変動します。
修繕積み立て基金(新築のみ)マンションを購入した場合に必要な費用で、10~15年ごとに行われる建物の大規模な修繕のための積立金にあてられます。新築マンションの場合は、月々の修繕積立金の額を抑えるため購入時にまとまった額の修繕積立基金を徴収することが慣例となっていて、相場は20~40万円ほどです。
保険料加入する火災保険や地震保険の料金です。
登録免許税不動産を購入する際、所有権を登録する手続き(所有権保存登記)を行います。この登記に対して発生する税金が登録免許税です。
司法書士への報酬上記の所有権保存登記は司法書士に依頼しなくてはならず、その報酬がかかります。
固定資産税不動産を所有すると固定資産税という税金が発生します。毎年1月1日時点での所有者が課税対象となりますが、売買によって所有者が変更になった場合は引渡しの時期に応じて売主と買主で負担額を分配します。
不動産取得税その名の通り、不動産を取得した際に課税される税金です。

住み替えで考慮すべき住宅ローンの問題

住宅ローンが残っている不動産も売却は可能?

住宅ローンが残っている不動産でも、基本的には売却は可能です。
もう少し詳しく言えば、住宅ローンを組む時は購入する不動産に「抵当権」を設定し、不動産を融資の担保とする手続きを行いますが、法的にはこの抵当権が設定されていても売却は可能とされています。
しかし、買い手側からすると「抵当権があり、差し押さえられる可能性がある物件」を買いたいとは思わないでしょう。ですから法的には可能でも、抵当権付きの不動産が実際に取引されることはほとんどありません。
抵当権は住宅ローンを完済することで抹消できるので、住み替えにより売却をする場合は、住宅ローンを完済する手続きをとります。多くの場合は売却で得た利益を繰り上げ返済に充てますが、利益が少なければ補填しきれない場合もあります。それでは抵当権抹消ができず、住み替えも頓挫してしまうようにも思いますね。
ですがそんな場合でも、住み替えのために利用可能な制度があります。売り先行、買い先行、それぞれで利用できる方法をご紹介しましょう。

住み替えローン:売り先行の場合

売却による利益が住宅ローンの残額よりも少ない場合、その残債と新居の購入費用をひとまとめにして融資してくれるのが住み替えローンです。しかし、住み替えローンの審査は、一般の住宅ローンの審査より基準が厳しいのが通例です。なぜならローン残債が残っている状態で、さらに追加での借り入れになるからです。審査の手順としては、購入の申し込みの後に住宅ローンの事前審査を行って、契約締結後の本審査がスムーズに進むように準備をします。また、住み替えローンを組むには売却と新居購入の決済日を同じ日付けにしなければなりません。新居探しに時間をかけられなくなるので、入念に計画する必要があります。

つなぎ融資:買い先行の場合

住宅ローンが残っているマイホームの売却より、新たな不動産を先に購入する場合に利用可能なのがつなぎ融資です。新居の購入とマイホームの売却がずれる場合に、新居の購入費用を一時的に融資してもらうことができます。しかし、売却で得た利益金額で融資額を一括で返済しなければならない融資です。

この融資は通常の住宅ローンよりも金利が高く、融資期間も半年~1年などと短期間です。この期間内に一括返済ができない場合は遅延損害金が発生します。このようにリスクもある程度高い融資でもあるのです。つなぎ融資の契約内容には、この遅延損害金のために期間内に物件が売れなければ不動産会社に相場の7~8割の価格で買い取ってもらうという特約がつけられる場合も少なくありません。これが適用されると大きな損失ともなります。
つなぎ融資を利用する場合は、もとの不動産がスムーズに売却できるものか、つなぎ融資がリスクに見合うものかなど事前調査をしっかり行うことが重要です。また、購入と売却のズレをできる限り小さくしてくれる、信頼できる不動産会社に相談することも一案です。

住み替えで節税ができる? 利用可能な控除や特例

不動産を売却して得たお金は譲渡所得とされ、課税対象になります。購入時の金額よりも高く売れた場合も低くなった場合(譲渡損失)もどちらも課税されますが、それぞれに適用される控除や特例があります。うまく利用してしっかり節税をしましょう。4つの方法をご紹介します。

①3,000万円控除:売却で得した場合

マイホームが購入金額よりも高い値段で売却でき利益が出た場合は、譲渡所得となって所得税や住民税の課税対象となります。ですが3,000万円控除を適用すると、3,000万円までの利益を非課税にできるのです。例えば、4,000万円で購入したマンションが5,000万円で売れたとすると、1,000万円が譲渡利益となりますが、この金額が3,000万円までであれば非課税となります。

②譲渡損失の損益通算:売却で損失した場合

不動産売却で損失(譲渡損失)が出た場合は確定申告の必要はありませんが、確定申告することで節税できる場合があります。それが譲渡損失の損益通算です。例えば、3,000万円で購入したマンションが2,000万円でしか売れなかったとしたら、差額の1,000万円が損失になります。ところが、その損失分もいくつかの条件を満たせば所得から相殺でき、納税額を減額することが可能なのです。損害が大きく1年で控除ができなかった場合は繰越控除を適用して、最長4年間は控除が行えます。ただしこの特例は、所有期間が5年を過ぎている場合のみ利用できるものなので要注意です。

③買い替え特例:売却利益が3,000万円超の場合(①とどちらかを選択)

住み替えによる不動産売却で譲渡利益が3,000万円を超えた場合に利用できるのが買い替え特例です。マイホームの住み替えで一定条件を満たしていれば活用できます。ただし、この特例は「控除」とは異なり、税金が減免されるものではありません。譲渡利益に対する所得税を次の住み替えの時の課税に繰り延べすることができるというものです。控除と混同しないようにしましょう。

④10年超所有軽減税率の特例:①と併用可能な唯一の方法

自身が居住し所有期間が10年を超えている不動産の売却なら、譲渡所得の税率を下げられます。①の3,000万円控除は、原則として他の控除との併用ができないのですが、この特例においてのみ可能です。10年超所有軽減税率の特例を適用した場合、譲渡所得6,000万円までは所得税が10%、住民税が4%になり、6,000万円を超えた場合は所得税が15%、住民税が5%となります。

各特例の適用ルートをまとめてみました!

いかがでしたか?
「基礎編」と「お金編」の2つのコラムでマイホームの住み替えについて解説してきました。多様な進め方や節約の仕方をご紹介しましたが、どの方法が正解ということはなく、それぞれメリット、デメリットがあることがお分かりいただけたでしょうか。後悔のない選択ができるよう入念に計画しましょう。

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